ⓔノート11-5-10 colonic inertia
消化管の筋層間神経叢あるいは平滑筋の傷害によって大腸運動が極度に低下するが,大腸は顕著には拡張しない病態である.腹部立位単純X線写真にて鏡面像がなく,腹部仰臥位単純X線写真・腹部CTにて大腸の拡張が認められず,通常の画像検査ではIBSとの鑑別は難しい.しかし,便秘の程度が2週間に一度の便通しかないなど,非常に重症である病像がIBSと異なる.欧米ではidiopathic severe constipationとも呼称されている.X線不透過マーカーを用いた消化管通過時間測定により,正常値から大きく遅延した結果で診断が可能である.すなわち,重症のslow transit constipationであって,巨大結腸症ではないものである.便秘型IBSにおいてはnormal transit constipationが多く,多少の消化管通過時間遅延が認められる症例もあるが,正常値に近い値を示す.
〔福土 審〕